「何度もジャンプする」
「ぐるぐる回る遊びが大好き」
「強く抱きつく」
「狭いところに入りたがる」
「物に体当たりするような遊びを好む」
子どものこうした様子を見て、
「どうしてこんなに激しい遊びが好きなの?」
「落ち着きがないのかな」
「刺激を感じにくいの?」
「発達と関係があるの?」
と気になることがあります。
子どもはもともと、走る、跳ぶ、揺れる、触るなど、さまざまな感覚を楽しみながら遊びます。
そのため、
「よく動く」
「刺激の強い遊びが好き」
というだけで、何か問題があるとは限りません。
一方で、
- 何度も強い刺激を求める
- 激しく動かないと落ち着きにくい
- 人や物への力加減が難しい
- 危険なほど高い場所や激しい動きを求める
- 痛みや暑さ、寒さなどに気づきにくい
といった様子があり、生活に困りごとが出ることもあります。
大切なのは、
「落ち着きがない」
と決めつけることではなく、
「どんな刺激を求めているのか」
「どんなときにその行動が増えるのか」
「安全に満たせる方法はあるか」
を見ていくことです。
子どもが刺激を強く求めるのはなぜ?
私たちは毎日の生活の中で、
音
光
触った感じ
体の動き
揺れ
力の入り具合
体の内側の感覚
など、さまざまな情報を受け取っています。
こうした感覚の感じ方には個人差があります。
少ない刺激でも強く感じる人もいれば、同じ刺激では物足りなく感じる人もいます。
子どもの中には、
もっと動きたい
もっと強く触りたい
もっと揺れたい
というように、強い刺激を好むように見える子もいます。
ただし、
「刺激を求める=感覚が鈍い」
と単純に考えることはできません。
楽しいから繰り返している場合もあれば、気分を切り替えるため、落ち着くため、退屈しているためなど、さまざまな背景があります。
感覚鈍麻とは?
感覚鈍麻とは、感覚刺激を感じにくかったり、刺激に対する反応が弱かったりする状態を表す言葉です。
たとえば、
- 痛みに気づきにくい
- 暑さや寒さに気づきにくい
- 服が濡れていても気になりにくい
- お腹がすいた、のどが渇いたことに気づきにくい
- けがをしていても訴えが少ない
といったことがあります。
国立障害者リハビリテーションセンターも、感覚鈍麻について、刺激を感じにくかったり反応が低下したりする状態と説明しています。
感覚鈍麻があると、
「平気そうだから大丈夫」
と周囲が思ってしまうことがあります。
しかし、本人が気づきにくいだけで、身体には負担がかかっている場合があります。
そのため、
- けが
- 暑さ
- 寒さ
- 水分
- 体調
などは、大人が意識して確認した方がよいことがあります。
「感覚探求」とは?
「感覚探求」は、強い刺激や繰り返す刺激を自分から求めるような行動を表すときに使われる言葉です。
たとえば、
- 何度もジャンプする
- ぐるぐる回る
- ブランコを長く続けたがる
- 強く抱きつく
- クッションに飛び込む
- 重い物を押したり引いたりしたがる
- 狭い場所へ入りたがる
といった行動です。
ただし、こうした遊びは多くの子どもが楽しむものでもあります。
そのため、
「ジャンプが好きだから感覚探求」
「回るのが好きだから発達障害」
と判断することはできません。
- どのくらい強く求めるのか。
- 安全面の問題があるか。
- 生活や学習に影響しているか。
- ほかの場面でも困りごとがあるか。
などを含めて考えます。
感覚鈍麻と感覚探求は同じもの?
同じではありません。
感覚鈍麻は、
「刺激を感じにくい・反応しにくい状態」
を表します。
感覚探求は、
「強い刺激や繰り返す刺激を求める行動」
を表します。
刺激を感じにくいために、より強い刺激を求めるように見えることもあります。
一方で、感覚鈍麻がなくても、単純にその動きが楽しい、気持ちよい、落ち着くなどの理由で刺激を求めることもあります。
そのため、
「刺激を求めるから感覚鈍麻」
とは決めつけないことが大切です。
どんな刺激を求めることがある?
刺激の求め方にもいくつかのパターンがあります。
ジャンプ・揺れ・回転を好む
- 何度もジャンプする。
- ブランコを長時間こぐ。
- ぐるぐる回る。
- 走り回る。
- 高いところから飛び降りたがる。
こうした動きを好む子もいます。
体の動きや揺れに関わる感覚を楽しんでいる可能性があります。
ただし、高い場所から飛び降りるなど、安全に関わる行動は止める必要があります。
強く押す・引く・ぶつかる遊びを好む
- 重い物を押す。
- クッションに飛び込む。
- 壁や家具に体を押しつける。
- 強く抱きつく。
こうした活動を好む子もいます。
体に力が入る感覚を心地よく感じている場合があります。
狭い場所に入りたがる
- 机の下。
- クッションの間。
- テント。
- 狭い隙間。
こうした場所を好む子もいます。
体が囲まれている感覚が安心につながっている可能性があります。
国立障害者リハビリテーションセンターも、感覚の感じ方の例として、狭い空間を好む場合があることを挙げています。
物を触り続ける
- いろいろな物に触る。
- ざらざらした表面を何度も触る。
- 手で物をこする。
- 特定の触り心地を繰り返し求める。
ということがあります。
触覚刺激を楽しんでいる場合があります。
口に物を入れたがる
年齢によっては、物を口に入れて確かめることは自然な発達の一部です。
一方で、年齢が上がっても、
- 服をかむ
- 鉛筆をかむ
- おもちゃなど食べ物ではない物を頻繁に口へ入れる
といった様子が続く場合があります。
誤飲や窒息につながる物については、安全確保を優先します。
食べ物ではない物を実際に食べてしまう場合には、別の原因も考える必要があるため、小児科などへ相談してください。
刺激を求める行動と力加減には関係がある?
- 強く抱きつく。
- 物を強く握る。
- ドアを勢いよく閉める。
- 友だちに触れる力が強い。
こうした行動があると、
「乱暴」
に見えることがあります。
しかし、本人にとっては、
「普通に触ったつもり」
という場合もあります。
体にどのくらい力が入っているか分かりにくかったり、強い感覚を好んでいたりすると、力の調整が難しくなることがあります。
ただし、すべての力加減の難しさが感覚探求によるものではありません。
運動の協調や注意、道具の使い方なども関係します。
感覚過敏と感覚鈍麻は一緒にみられることがある?
あります。
たとえば、
- 音にはとても敏感だけれど、痛みには気づきにくい。
- 服の肌ざわりには敏感だけれど、強い揺れは好む。
というように、感覚の種類によって反応が違うことがあります。
つまり、
「感覚が敏感な子」
「感覚が鈍い子」
と一つに分けられるとは限りません。
一人の子どもの中でも、
刺激によって敏感さと鈍感さの両方がみられることがあります。
「刺激を求める=発達障害」ではありません
刺激を強く求める様子があると、
「発達障害と関係があるのでは?」
と心配になることがあります。
実際に、自閉スペクトラム症(ASD)などの神経発達症では、感覚刺激への反応の違いがみられることがあります。
日本小児神経学会も、ASDでは感覚の過敏や鈍麻がみられる場合があると説明しています。
一方で、
刺激を求める行動があるというだけで、発達障害と判断することはできません。
子どもはもともと、
- 走る
- 跳ぶ
- 揺れる
- 触る
といった感覚を楽しみながら遊びます。
大切なのは、
- 人とのやりとり
- ことばやコミュニケーション
- 行動や興味
- 注意や衝動
- 日常生活での困りごと
など、発達全体を含めて見ることです。
ADHDと刺激を求める行動には関係がある?
よく動いたり、刺激の強い活動を好んだりすると、
「ADHDなのでは?」
と思うことがあります。
ADHDでは、多動性や衝動性などがみられることがあります。
ただし、
- よくジャンプする
- 激しい遊びが好き
- じっとしていない
という行動だけでADHDと判断することはできません。
ADHDでは、
- 複数の場面で症状が続いているか
- 生活や学習にどの程度影響しているか
- 年齢や発達水準と比べてどうか
などを含めて専門家が評価します。
家庭でできる工夫
刺激を求める行動がある場合には、
「動かないで」
「やめなさい」
と止め続けるだけでなく、
安全に動ける方法を考えます。
まず安全を確保する
- 高いところから飛び降りる。
- 道路へ飛び出す。
- 家具へ体当たりする。
- 人へ強くぶつかる。
といった行動は、本人や周囲がけがをする可能性があります。
感覚を満たすことよりも、安全確保を優先します。
安全に体を動かせる場所を作る
- 公園。
- 広い場所。
- 安全を確認した室内。
など、体を動かしても危険が少ない環境を選びます。
- 走る。
- ジャンプする。
- ボール遊びをする。
といった活動を、安全な条件で楽しめるようにします。
動く時間を予定に入れる
長時間じっとしていることが難しい子では、
ずっと我慢させる
よりも、
- 活動する
- 少し体を動かす
- また戻る
という流れの方が取り組みやすいことがあります。
宿題や座る活動の途中に、短い休憩を入れる方法もあります。
好きな刺激を把握する
子どもが、
- どんな動きを好むのか
- どんな触り心地を好むのか
- どんな場所で落ち着くのか
を観察します。
「好きな感覚」を知ることで、気分転換や安心につながる方法を見つけられる場合があります。
国立障害者リハビリテーションセンターも、本人が好む感覚を見つけ、安心やリラックス、気分転換に活用することを紹介しています。
強い刺激を無制限に与えない
「刺激を求めるなら、もっと強く刺激すればいい」
というわけではありません。
- 激しく回転させる。
- 高い場所から繰り返し飛ばせる。
- 強く圧迫する。
といった活動には危険が伴う場合があります。
特に、家庭で専門的な「感覚統合」の方法を自己流で行う必要はありません。
安全性を優先し、本人が楽しめる通常の遊びや運動の範囲で考えます。
「やめて」だけでなく代わりの方法を示す
人に体当たりする場合、
「ぶつからないで」
だけでは、本人がどうすればよいか分からないことがあります。
たとえば、
「人にはぶつからない。クッションならOK」
というように、
してはいけないこと
代わりにできること
を具体的に伝えます。
力加減を具体的に伝える
強く触ってしまう場合には、
「優しく」
だけでなく、
「このくらいの力」
と見本を見せます。
感覚を満たせば落ち着くの?
好きな感覚を使った活動によって、
- 気分転換できる
- 落ち着きやすくなる
- 活動へ戻りやすくなる
子もいます。
一方で、
「この運動をすれば必ず落ち着く」
という方法がすべての子どもにあるわけではありません。
同じ子どもでも、
- その日の疲れ
- 環境
- 活動内容
によって反応は変わります。
そのため、
「この刺激を与えればよい」
と固定するのではなく、
本人の様子を見ながら調整することが大切です。
感覚鈍麻で特に気をつけたいこと
刺激を感じにくい場合には、
本人が危険や体調変化に気づくのが遅れることがあります。
たとえば、
- けがに気づきにくい
- 暑さや寒さに気づきにくい
- のどの渇きに気づきにくい
- 痛みをあまり訴えない
といった場合です。
そのため、
- 外遊びのあとにけががないか確認する
- 暑い日は定期的に水分をとる
- 本人が「平気」と言っていても体調を見る
など、大人が確認した方がよいことがあります。
感覚を感じにくいことは、
「我慢強い」
という意味とは限りません。
園や学校ではどうすればいい?
園や学校では、
- 長く座る
- 静かに待つ
- 集団で行動する
時間があります。
刺激を求める子どもにとって、こうした時間が負担になる場合があります。
先生には、
「どんな場面で動きが増えるのか」
「どんな活動のあとなら落ち着きやすいか」
「危険になりやすい行動は何か」
を伝えます。
必要に応じて、
- 短い休憩を入れる
- 席を調整する
- 体を動かす役割を入れる
などの方法を相談できる場合があります。
相談した方がいいのはどんなとき?
刺激を求める遊びが好きというだけで、必ず相談が必要というわけではありません。
一方で、次のような場合には専門家への相談を考えてもよいでしょう。
- 危険なほど強い刺激を繰り返し求める
- 転倒やけがが非常に多い
- 人への体当たりや強い接触でトラブルが続いている
- 動き続けることで生活や学習に大きな影響がある
- 痛みや暑さ、寒さなどに気づきにくい
- 食べ物ではない物を繰り返し口に入れる、または食べる
- 感覚以外の発達についても気になることがある
- 園や学校でも大きな困りごとになっている
- 本人や家族の負担が大きい
また、
- 以前はなかった感覚の変化が急に現れた
- 急に痛みに反応しなくなった
- 手足の感覚や動きに変化がある
などの場合には、発達だけの問題と考えず、医療機関へ相談してください。
相談先はどこ?
相談先としては、
- かかりつけの小児科
- 発達を専門とする医療機関
- 自治体の発達相談
- 保健センター
- 作業療法士
- 園や学校の先生
- 地域の発達障害者支援センター
などがあります。
感覚の感じ方によって日常生活への影響が大きい場合には、作業療法士などが生活場面や活動を確認し、本人が過ごしやすい方法を検討することがあります。
相談するときには、
「刺激を求めます」
だけでなく、
「どんな刺激を求めるのか」
「どのくらいの頻度か」
「どんな場面で増えるか」
「危険な行動はあるか」
「どんなことをすると落ち着くか」
「園や学校でも同じ様子があるか」
などを伝えると、状況を整理しやすくなります。
刺激を求める行動だけで、その子を決めつけない
- よく動く。
- 強い刺激を好む。
- 何度も同じ動きを繰り返す。
そんな姿があると、
「落ち着きがない」
「乱暴」
「じっとできない」
と見られてしまうことがあります。
でも、
- 体を動かすと落ち着きやすい。
- 強い感覚の方が分かりやすい。
- その遊びが単純に楽しい。
ということもあります。
大切なのは、
「止めること」
だけではありません。
- どんな刺激を求めているのか。
- どんな場面で増えるのか。
- 安全にできる方法はあるか。
- どんな環境なら過ごしやすいのか。
そうしたことを一つずつ知っていくことです。
理解できることが増えれば、できることも増えていきます。
