「椅子に座ると、すぐに姿勢が崩れる」
「机に伏せてしまう」
「足を椅子に絡めたり、立ち上がったりする」
「食事や宿題の間、じっと座っていられない」
「何度言っても姿勢がよくならない」
子どものこうした様子を見て、
「姿勢が悪いのは筋力が足りないから?」
「落ち着きがないだけ?」
「発達と関係があるの?」
と気になることがあります。
でも、
「姿勢が悪い」
「座っていられない」
ように見える背景は一つではありません。
- 椅子や机が体に合っていない
- 長く同じ姿勢を保つことが大変
- 疲れている
- 周囲の刺激が気になる
- 課題が難しい、または興味を持ちにくい
- 体を動かしたい
- 感覚の感じ方に違いがある
- 運動の協調や姿勢の調整に難しさがある
など、さまざまなことが関係する場合があります。
大切なのは、
「ちゃんと座りなさい」
と繰り返すことだけではなく、
「なぜその姿勢になるのか」
「どんな場面なら座りやすいのか」
「何を変えると楽になるのか」
を見ていくことです。
子どもの姿勢が悪い・座っていられないのはなぜ?
座るという動作は、ただ椅子の上で動かずにいることではありません。
体を支える。
バランスを保つ。
机の上を見る。
手を使う。
話を聞く。
周囲の刺激の中から必要なことに注意を向ける。
こうしたことを同時に行っています。
そのため、どこかに負担があると、
机に伏せる
椅子の上で姿勢を変える
足を絡める
立ち上がる
といった形で現れることがあります。
「座らない」のではなく、
「その姿勢を保つことが大変」
という場合もあります。
「姿勢が悪い」とはどんな様子?
子どもの姿勢について気になる場面には、いくつかのパターンがあります。
机に伏せる・体を傾ける
宿題や食事をしていると、
- 机に肘をつく
- 頭を手で支える
- 机に伏せる
- 体が左右に傾く
といった姿がみられることがあります。
姿勢を保つことへの負担だけでなく、
- 疲れ
- 眠気
- 課題への集中
- 机や椅子の高さ
なども関係する可能性があります。
椅子の上でもぞもぞ動く
座っていても、
- 姿勢を何度も変える
- 足を動かす
- 椅子を揺らす
- 座り直す
という子もいます。
動くことで体を楽にしていたり、注意を保ちやすくしていたりする場合があります。
そのため、
「動く=ふざけている」
とは限りません。
足を椅子に絡める・正座する
椅子の脚に足を絡めたり、椅子の上で正座やあぐらをしたりすることがあります。
足が床につかない椅子では、安定する場所を探してこうした姿勢になることもあります。
まずは、
足が床についているか
椅子が大きすぎないか
を確認してみます。
すぐに立ち上がる
食事や宿題の途中で何度も立つ場合には、
体を動かしたい
周囲の物が気になる
長時間座ることが負担
課題が難しい
何をすればよいか分からない
など、さまざまな理由が考えられます。
「何分座れたか」だけではなく、
どんな活動のときに立ちやすいのか
を見ることが大切です。
姿勢を保つためには何が必要?
座った姿勢を保つためには、体のいろいろな働きが関係しています。
体を支える力
椅子に座り続けるためには、体幹や首、肩などを使って体を支えます。
体を支えることへの負担が大きい場合には、
机に寄りかかる
頭を手で支える
姿勢を頻繁に変える
といった様子がみられることがあります。
ただし、
「姿勢が崩れる=体幹が弱い」
と一つの理由だけで判断することはできません。
バランスや運動の調整
自分の体がどの位置にあるのかを感じながら、倒れないように細かく調整する必要があります。
運動の協調が苦手な子では、こうした姿勢の調整にも負担がかかることがあります。
感覚の感じ方
座っているときにも、
- 椅子に触れている感覚
- 足の裏の感覚
- 体の傾き
- 周囲の音
- 視覚的な刺激
など、多くの感覚情報が入っています。
感覚の感じ方によって、
同じ姿勢を続けることがつらい
体を動かした方が落ち着く
という子もいます。
注意や集中
姿勢と集中は別々の問題とは限りません。
課題が難しすぎる。
説明が長い。
周囲の刺激が多い。
疲れている。
こうした状況では、座っていること自体が難しくなる場合があります。
国立障害者リハビリテーションセンターも、落ち着きにくい子どもについて、活動内容が簡単すぎたり難しすぎたりすると集中しにくいことがあり、注意が続く長さに合わせて説明を短くするなどの工夫を紹介しています。
机や椅子が体に合っているか確認する
姿勢が気になるときに、まず確認したいのが机と椅子です。
椅子が高すぎて足がぶらぶらしている。
机が高すぎる。
椅子が大きすぎて背もたれまで届かない。
こうした状態では、安定した姿勢を保ちにくくなります。
子ども向けの作業療法・理学療法サービスでも、
足が床や足台で支えられている
背中を椅子で支えられる
机と椅子の高さが体に合っている
ことが、座りやすい環境づくりの基本として紹介されています。
足が床につくことはなぜ大切?
足が床につかずぶらぶらしていると、体を支える場所が少なくなります。
その結果、
椅子の脚に足を絡める
椅子の上に足を乗せる
前へずり落ちる
といった姿勢になることがあります。
足が床につかない場合には、
足台
安定した箱
などを使って、足を支えられるようにする方法があります。
ただし、安全に固定できるものを使い、滑ったり倒れたりしないようにします。
「座っていられない=ADHD」ではありません
子どもが何度も立ち上がったり、椅子の上で動いたりすると、
「ADHDなのでは?」
と心配になることがあります。
しかし、
座っていられないという一つの行動だけで、ADHDと判断することはできません。
子どもは、
- 疲れている
- 課題が難しい
- 周囲が気になる
- 長時間座っている
- 体を動かしたい
といった場合にも動きやすくなります。
一方で、ADHDのある子どもの中には、多動性や衝動性などによって、座っていることが難しい場合があります。
ADHDについて考えるときには、
家庭だけでなく園や学校でも同じような様子があるか
どのくらい続いているか
生活や学習にどの程度影響しているか
など、さまざまな情報を含めて評価します。
姿勢と発達性協調運動症(DCD)には関係がある?
発達性協調運動症(DCD)は、運動の協調に関わる神経発達症の一つです。
DCDでは、
- 走る
- 跳ぶ
- ボールを扱う
- はさみや箸を使う
- 書く
などの運動や手先の活動に難しさがみられることがあります。
姿勢の調整に負担がみられる子もいますが、
「姿勢が悪い=DCD」
というわけではありません。
DCDでは、年齢や経験から期待されるより運動技能の獲得・遂行が難しく、その困難が日常生活や学校生活に影響しているかなどを含めて評価します。
感覚と「座っていられない」には関係がある?
周囲から見ると落ち着きがないように見えても、
本人が感覚刺激を調整するために動いている場合があります。
たとえば、
- 体を揺らす
- 足を動かす
- 椅子の姿勢を変える
ことで、落ち着きやすくなる子もいます。
反対に、
教室の音がうるさい
服や椅子の感触が気になる
人が動くのが視界に入り続ける
ことで、座っていることが難しくなる場合もあります。
家庭でできる工夫
姿勢や座り方が気になるときには、
「正しい姿勢をずっと保たせる」
ことだけを目標にせず、取り組みやすい環境をつくります。
まず机と椅子を確認する
最初に、
足が床または足台についているか
背中を支えられるか
机が高すぎたり低すぎたりしないか
を確認します。
椅子が大きすぎる場合には、背中と背もたれの間にクッションを入れるなどの方法もあります。
短い時間から始める
長時間ずっと座ることが難しい場合には、
最初から30分座る
といった目標にしなくても構いません。
たとえば、
- 10分取り組む
- 一度立って休憩する
- また戻る
というように区切ります。
子どもが集中できる時間に合わせて調整します。
体を動かす時間を入れる
長く座る前後に、
- 歩く
- 伸びをする
- 外で遊ぶ
- 軽く体を動かす
といった時間を入れる方法があります。
ずっと同じ姿勢を保たせるより、適度に姿勢を変えたり休憩したりする方が取り組みやすい場合があります。
気が散るものを減らす
宿題をするときに、
- テレビがついている
- 机の上におもちゃがある
- 人が頻繁に通る
といった環境では、注意がそれやすくなることがあります。
必要のない刺激を少し減らすだけでも、座って取り組みやすくなる子がいます。
課題を小さくする
座れない原因が、
「課題が難しすぎる」
ことである場合もあります。
「プリント全部」
ではなく、
「まずここまで」
というように、終わりが分かる形にします。
姿勢を注意し続けない
「背筋を伸ばして」
「ちゃんと座って」
「足を下ろして」
と何度も注意されると、課題そのものより姿勢を注意される時間が増えてしまいます。
安全上の問題がなく、活動ができているのであれば、
多少姿勢が変わっていても問題にならない場合があります。
大切なのは、
「見た目が正しい姿勢」
だけではなく、
本人が無理なく活動できているか
を見ることです。
できている時間を具体的に伝える
「落ち着きなさい」
だけではなく、
「今、座って最後までできたね」
「一度休憩して戻れたね」
「足を台に置いたら書きやすそうだね」
というように、うまくいった行動を具体的に伝えます。
姿勢をよくするために「体幹トレーニング」は必要?
姿勢について調べると、
「体幹を鍛えればよい」
という情報を目にすることがあります。
体を動かすことや、さまざまな遊びを経験することは、子どもの運動発達にとって大切です。
一方で、
姿勢の崩れには、
椅子や机
疲れ
運動の調整
感覚
集中
痛み
などさまざまな要因が関係します。
そのため、
「姿勢が悪いから体幹トレーニング」
と一つの方法だけに決める必要はありません。
普段の遊びの中で、
走る
登る
しゃがむ
バランスを取る
ボールで遊ぶ
など、いろいろな形で体を動かすこともできます。
強い運動の苦手さや姿勢保持の難しさがある場合には、専門家に相談して、その子に合った方法を考える方が安全です。
「正しい姿勢」をずっと続けさせた方がいい?
同じ姿勢を長く続けることが、必ずしもよいわけではありません。
大人でも長時間座っていれば、姿勢を変えたくなります。
子どもも同じです。
多少動いたり、座り直したりすること自体を、
「悪い姿勢」
と考える必要はありません。
重要なのは、
痛みがないか
活動に参加できているか
極端に疲れていないか
学習や生活に困っていないか
です。
姿勢を固定することより、
無理のない姿勢で活動し、必要に応じて休憩や姿勢変更ができる環境
を考えます。
相談した方がいいのはどんなとき?
姿勢が崩れやすかったり、よく動いたりすることには個人差があります。
一方で、次のような場合には相談を考えてもよいでしょう。
- 座っていることが非常につらそう
- 姿勢の難しさによって学習や食事に大きな影響がある
- 運動や手先の不器用さも強い
- 転倒が非常に多い
- 園や学校でも大きな困りごとになっている
- 本人が疲れや痛みを訴える
- 片側だけ姿勢が崩れるなど左右差が気になる
- 手足に力が入りにくそう
- 歩き方にも気になるところがある
- 以前できていたことができなくなった
特に、
急に姿勢や歩き方が変わった
以前できていた運動ができなくなった
手足の力が弱くなった
強い痛みがある
といった場合には、早めに医療機関へ相談してください。
相談先はどこ?
相談先としては、
- かかりつけの小児科
- 発達を専門とする医療機関
- 自治体の発達相談
- 保健センター
- 作業療法士
- 理学療法士
- 園や学校の先生
などがあります。
運動や姿勢、歩き方などに気になる症状がある場合には、小児神経や整形外科などで評価が必要になることもあります。
日本小児神経学会も、よく転ぶ、歩き方がおかしい、手足に力が入りにくいなどの症状は、小児神経で評価される症状として挙げています。
相談するときには、
「姿勢が悪いです」
だけでなく、
「どんな姿勢になるか」
「何分くらい座っていられるか」
「どんな活動では座りやすいか」
「家庭と園・学校で違いがあるか」
「痛みや疲れはあるか」
「運動や手先にも気になることがあるか」
などを伝えると、状況を整理しやすくなります。
姿勢だけで、その子を決めつけない
姿勢が崩れていたり、何度も立ち上がったりすると、
「落ち着きがない」
「ちゃんとできない」
という部分ばかりが目につきやすくなります。
でも、
立っている方が考えやすい。
少し動いたあとなら集中できる。
足を支えると座りやすい。
課題を短くすると最後までできる。
ということもあります。
大切なのは、
「正しく座らせること」
だけではありません。
その子は何に困っているのか。
どんな姿勢なら楽なのか。
どんな環境なら取り組みやすいのか。
どのくらいの時間なら集中できるのか。
そうしたことを一つずつ知っていくことです。
理解できることが増えれば、できることも増えていきます。
参考資料
- 国立障害者リハビリテーションセンター 発達障害情報・支援センター
「発達障害児の家族への助言に関わる医師及び市町村担当者等への情報」 - 国立障害者リハビリテーションセンター 発達障害情報・支援センター
「Q1.学校でも家庭でも落ち着きのないAくん」 - 一般社団法人 日本小児神経学会
「Q94:神経発達症にはどのような疾患が含まれますか?」 - 一般社団法人 日本小児神経学会
「小児神経医が主に専門としている病気について」 - Bedfordshire and Luton Children’s Health / NHS
「Sitting position and posture」 - Oxford Health NHS Foundation Trust
「Good sitting posture」
