「片足立ちが苦手」
「ケンケンがうまくできない」
「平均台のような細いところを怖がる」
「少し押されるだけでバランスを崩す」
「走ったり方向を変えたりすると転びやすい」
子どものこうした様子を見て、
「バランス感覚が悪いのかな」
「練習が足りない?」
「発達と関係があるの?」
と気になることがあります。
子どものバランス能力は、成長や経験とともに少しずつ発達していきます。
また、同じ「バランスが苦手」に見える場合でも、
- 姿勢を保つこと
- 体の位置を感じること
- 左右の体を協力させること
- 足元や周囲を見ること
- 力加減
- 動きのタイミング
- 感覚の感じ方
- その運動を経験した量
など、さまざまなことが関係する場合があります。
大切なのは、
「もっと練習しなさい」
と繰り返すことではなく、
「どんな動きが難しいのか」
「どんな場面ならできるのか」
「何を変えると取り組みやすいのか」
を見ていくことです。
子どもが片足立ち・バランスを苦手なのはなぜ?
私たちは立ったり歩いたりするとき、体が倒れないように常に細かな調整をしています。
片足立ちでは、
- 片方の足で体を支える
- 体の傾きを感じる
- 足首や膝、体幹を調整する
- 目で周囲を確認する
といった働きが同時に必要です。
そのため、一見簡単に見える片足立ちでも、子どもにとってはいくつもの働きを組み合わせる運動です。
どこかに難しさがあると、
- ふらつく
- すぐ足をつく
- 体が大きく傾く
- 怖がってやりたがらない
といった形で現れることがあります。
バランスが苦手だとどんな様子がみられる?
バランスの難しさは、片足立ちだけに現れるわけではありません。
片足立ちが続かない
- 片足を上げるとすぐに足をつく。
- 両手を大きく広げる。
- 体が左右に大きく揺れる。
こうした様子がみられることがあります。
小さな子どもでは、片足立ちそのものがまだ発達の途中であることもあります。
一回できるかどうかだけでなく、年齢や日常生活全体を含めて見ます。
ケンケンやスキップが苦手
ケンケンでは、
- 片足で体を支える
- 跳ぶ
- 着地する
- 再びバランスを取る
ことを繰り返します。
スキップではさらに、左右の足を違うタイミングで動かす必要があります。
そのため、片足でのバランスや協調した動きが苦手な子には難しいことがあります。
階段が苦手
階段では、
- 片足で体を支える
- 次の段へ足を移す
- 高さを確認する
- 体重を移動する
という動作を繰り返します。
- 手すりがないと不安。
- 一段ずつ両足をそろえて上り下りする。
- 下りるときに特に怖がる。
といった様子がみられる場合があります。
平均台や細い場所を怖がる
公園の遊具や平均台などで、
- 足元ばかり見る
- 大人の手を離せない
- 途中で動けなくなる
ということがあります。
単に怖がりというだけでなく、バランスを保つことへの不安が関係する場合もあります。
方向転換すると転びやすい
まっすぐ走ることはできても、
- 急に止まる
- 曲がる
- 人を避ける
といった場面でバランスを崩す子もいます。
動きながら体の向きや速度を調整する必要があるためです。
バランスを取るためには何が必要?
バランスは、一つの能力だけで成り立っているわけではありません。
姿勢を保つ力
立っているときには、体が倒れないように首、体幹、足などを使って姿勢を調整しています。
姿勢を保つことに負担がある場合には、片足立ちのように支える面が小さくなる動きが難しくなることがあります。
体の位置や動きを感じる感覚
目を閉じていても、自分の手足がどこにあるかをある程度感じることができます。
体の位置や関節の動きを感じる情報は、動きを調整するために使われます。
そのため、体の位置を把握しにくいと、
- 足をどこへ置けばよいか分かりにくい
- 動きが大きくなりすぎる
といったことにつながる場合があります。
揺れや傾きを感じる感覚
頭や体の動き、傾きなどを感じる働きも、バランスを保つために関係します。
子どもによっては、
- ブランコを強く怖がる
- 高いところを怖がる
ことがあります。
反対に、
- ぐるぐる回る
- 何度もジャンプする
など、強い動きを好む場合もあります。
目から入る情報
- 足元を見る。
- 障害物を見る。
- 周囲との距離を確認する。
といった視覚情報も、バランスを保つために使っています。
暗い場所や足場が不安定な場所では、普段よりバランスを取りにくくなることがあります。
運動を組み合わせる力
ケンケン、スキップ、ボール遊びなどでは、バランスだけでなく複数の動きを組み合わせる必要があります。
国立障害者リハビリテーションセンターも、子どもによって身体全体の運動や協調動作に苦手さがみられる場合があるとしています。
「バランスが苦手=発達性協調運動症(DCD)」ではありません
バランスの苦手さについて調べると、
「発達性協調運動症(DCD)」
という言葉を目にすることがあります。
DCDは、運動の協調に関わる神経発達症の一つです。
DCDのある子どもでは、
- 走る
- 跳ぶ
- ケンケンする
- 階段を使う
- ボールを扱う
などの運動に難しさがみられることがあります。
また、
- 物にぶつかる
- 物を落とす
- よく転ぶ
といった様子がみられる子もいます。
ただし、
- 片足立ちが苦手
- バランスを崩しやすい
という一つの行動だけでDCDと判断することはできません。
NHSも、DCDの子どもは転びやすかったり運動や協調動作に難しさがみられる場合がある一方、見た目に不器用でも年齢相応の運動技能を持つ子どももいると説明しています。
よく転ぶこととバランスには関係がある?
バランスを崩しやすい子どもでは、転倒が多くなることがあります。
ただし、
「よく転ぶ=バランスの問題」
と一つの原因に決めることはできません。
- 疲れ。
- 靴。
- 地面の状態。
- 注意が別のものに向いていた。
- 急いでいた。
など、さまざまなことが影響します。
バランスが苦手なのは運動不足だから?
運動を経験する機会が少なければ、慣れていない動きが難しいことはあります。
遊びの中で、
- 走る
- 登る
- ジャンプする
- 片足で立つ
- ボールで遊ぶ
といったさまざまな動きを経験することは大切です。
一方で、
- 十分経験しているのに難しさが強い
- 年齢とともに差が大きくなっている
- 日常生活にも困りごとがある
という場合には、
「運動不足」
だけで説明できないこともあります。
家庭でできる工夫
バランスが苦手な子どもに、
「何度も片足立ちを練習させる」
だけが方法ではありません。
できる活動から、少しずつ経験を広げていきます。
安全な場所から始める
転ぶことへの不安が強い場合には、
- 壁の近く
- 大人のそば
- 広く安全な場所
など、安心できる環境から始めます。
怖さが強い状態で無理に行う必要はありません。
支えを使ってみる
最初から支えなしで片足立ちをするのではなく、
- 壁に手をつく
- 椅子につかまる
- 大人の手につかまる
ところから始めても構いません。
少しずつ支えを減らしていきます。
短い時間から試す
最初から長時間の片足立ちを求める必要はありません。
- ほんの少し足を上げる。
- 1秒できたら終わる。
というところから始めることもできます。
「できた」
という経験を増やしていきます。
遊びの中でバランスを使う
片足立ちだけを繰り返すのではなく、
- 線の上を歩く
- 低い段差を歩く
- 片足で軽くジャンプする
- クッションの上に立つ
など、遊びの中でさまざまなバランスを経験できます。
安全を確保し、年齢や本人の様子に合わせて行います。
難しさを少しずつ変える
簡単な条件から始めて、
できるようになったら少しだけ難しくする
という方法があります。
たとえば、
- 広い場所から細い場所へ
- 手をついた状態から手を離す
- ゆっくりした動きから少し速い動きへ
というように調整します。
好きな遊びを使う
バランスの練習そのものを嫌がる場合でも、
- 公園遊び
- ダンス
- 自転車
- 水遊び
など、好きな活動なら自然に体を動かせることがあります。
「訓練すること」だけを目的にせず、楽しめることも大切です。
できた部分を具体的に伝える
「上手」
だけではなく、
「今日は2秒立てたね」
「手を離してできたね」
「前よりゆっくり歩けたね」
というように、変化を具体的に伝えます。
無理に片足立ちを練習させた方がいい?
片足立ちそのものを繰り返せばよいとは限りません。
片足立ちが苦手な背景には、
- 姿勢
- バランス
- 感覚
- 協調運動
- 不安
などさまざまな要素が関係します。
本人が強く嫌がったり、何度行ってもうまくいかなかったりする場合には、
同じ練習を増やす
だけではなく、
- 難しさを下げる
- 支えを使う
- 別の遊びで体を使う
といった方法を考えます。
相談した方がいいのはどんなとき?
バランス能力には個人差があります。
一方で、次のような場合には相談を考えてもよいでしょう。
- 転倒が非常に多い
- 歩いたり走ったりするだけでも頻繁にバランスを崩す
- 階段や段差への不安が強い
- ケンケンやジャンプなどの運動が年齢に比べてかなり難しい
- 体育や外遊びへの参加を強く避けている
- 日常生活にも影響が出ている
- 手先の不器用さも強い
- 園や学校から運動について相談を勧められている
- 本人が強く困っている
特に、
- 以前できていた運動ができなくなった
- 急にバランスを崩すようになった
- 片側だけ動かしにくそう
- 手足に力が入りにくい
- 歩き方が急に変わった
- 強い痛みやめまいがある
といった場合には、早めに医療機関へ相談してください。
相談先はどこ?
相談先としては、
- かかりつけの小児科
- 発達を専門とする医療機関
- 自治体の発達相談
- 保健センター
- 理学療法士
- 作業療法士
- 園や学校の先生
などがあります。
国立障害者リハビリテーションセンターも、発達性協調運動の困難がある場合などには、必要に応じて理学療法や作業療法を行う小児科リハビリテーションにつながることがあるとしています。
相談するときには、
「バランスが悪いです」
だけでなく、
「どんな動きが難しいか」
「どんな場面で転ぶか」
「片足立ちはどのくらいできるか」
「階段や遊具はどうか」
「家庭と園・学校で違いがあるか」
「以前と比べて変化があるか」
などを伝えると、状況を整理しやすくなります。
バランスの得意・不得意だけで、その子を決めつけない
バランスが苦手だと、
「運動神経が悪い」
「不器用」
「怖がり」
と見られてしまうことがあります。
でも、
- ゆっくりならできる。
- 支えがあればできる。
- 球技は苦手でも、水遊びは好き。
- 高い場所は怖くても、平らな場所ならよく走れる。
ということもあります。
大切なのは、
「できるか、できないか」
だけではありません。
- どんな条件ならできるのか。
- 何が不安なのか。
- どんな方法なら楽しめるのか。
- どんな環境なら参加しやすいのか。
そうしたことを一つずつ知っていくことです。
理解できることが増えれば、できることも増えていきます。
