「よく転ぶ」
「ボールをうまく投げたり受けたりできない」
「はさみや箸が苦手」
「字を書くのに時間がかかる」
「姿勢が崩れやすい」
子どものこうした様子を見て、
「ただ不器用なだけ?」
「練習が足りないのかな」
「発達と関係があるの?」
と気になることがあります。
子どもの運動や手先の使い方には個人差があります。
また、同じ「不器用」に見える行動でも、
- 体全体の動かし方
- 手先の操作
- 姿勢の保ちやすさ
- 力加減
- タイミング
- 感覚の感じ方
- その活動を経験した量
など、さまざまなことが関係します。
大切なのは、
「もっと練習すればできる」
と決めつけることではなく、
「どこが難しいのか」
「どんなやり方ならできるのか」
「何を変えると取り組みやすくなるのか」
を見つけていくことです。
子どもの不器用さはなぜみられる?
体を動かすときには、
見る
考える
体の位置を感じる
力を調整する
複数の動きを組み合わせる
タイミングを合わせる
といった働きが同時に使われています。
そのため、一見単純に見える動作でも、子どもにとっては複雑なことがあります。
たとえば、ボールを受け取るだけでも、
ボールを見る
どこへ飛んでくるか予測する
体を動かす
手を出す
ちょうどよい力で受け止める
という複数の動きが必要です。
どこかに難しさがあると、
「運動が苦手」
「不器用」
という形で見えることがあります。
「不器用」とはどんな様子?
不器用さは、スポーツだけに現れるとは限りません。
日常生活のさまざまな場面で気づくことがあります。
よく転ぶ・ぶつかる
何もないところでつまずく。
家具や人にぶつかる。
走るとバランスを崩しやすい。
こうした姿がみられることがあります。
ただし、小さな子どもは成長の途中なので、転ぶこと自体は珍しくありません。
年齢だけでなく、頻度や生活への影響も含めて見ます。
ボール遊びや運動が苦手
ボールを投げる。
受ける。
蹴る。
縄跳びをする。
自転車に乗る。
こうした動きでは、複数の体の動きをタイミングよく組み合わせる必要があります。
そのため、協調した動きが苦手な子には難しく感じられることがあります。
はさみ・箸・ボタンなどが苦手
手先の不器用さは、
- はさみを使う
- 箸を使う
- ボタンを留める
- ひもを結ぶ
- 折り紙を折る
- 小さな物を扱う
といった場面でみられることがあります。
「分かっているのに、手が思うように動かない」
ということもあります。
書くことに時間がかかる
鉛筆を持つことや、文字を書くことにも、
姿勢
手首
指
目の動き
力加減
などが関係しています。
字を書くのに時間がかかる。
筆圧が極端に強い、または弱い。
すぐに手が疲れる。
こうした様子がある場合、単に「字が雑」というだけではないことがあります。
姿勢を保つのが大変
机に座っていると、
すぐに体が傾く。
机に伏せる。
椅子の上でもぞもぞ動く。
足を絡める。
という子もいます。
これだけで運動の問題と判断することはできませんが、姿勢を保つこと自体に負担がある場合もあります。
不器用さの背景には何がある?
同じ行動でも、背景は一人ひとり異なります。
まだ発達の途中
子どもの運動能力は、経験と成長によって少しずつ発達します。
幼い時期には、
走る
跳ぶ
片足で立つ
道具を使う
といった動きがまだ安定していないことがあります。
周囲の子どもと比べるだけでなく、
以前よりできることが増えているか
を見ることも大切です。
経験の違い
あまり経験したことのない活動は、うまくできなくても不思議ではありません。
たとえば、
ボール遊びをほとんどしてこなかった子
はさみを使う機会が少なかった子
では、経験の差が動きに現れることがあります。
ただし、十分経験していても難しさが強い場合には、別の背景を考えることがあります。
体の動きを組み合わせることが難しい
走りながらボールを蹴る。
両手を別々に動かす。
縄を回しながら跳ぶ。
こうした動作では、複数の動きを協調させる必要があります。
一つひとつの動きはできても、組み合わせると難しくなる子もいます。
力加減が難しい
鉛筆を強く握りすぎる。
物をそっと置けない。
ボールを投げる力が強すぎたり弱すぎたりする。
こうした場合には、力の調整が難しい可能性があります。
感覚の感じ方
体を動かすときには、
触った感じ
体の位置
揺れ
バランス
などの感覚も使っています。
感覚の感じ方に違いがあると、動き方や姿勢に影響することがあります。
たとえば、
- ブランコを極端に怖がる
- 高い場所を怖がる
- 逆に強い揺れを好む
- 手が汚れる遊びを嫌がる
- 人に触れられることを嫌がる
といった様子がみられる子もいます。
国立障害者リハビリテーションセンターも、感覚の敏感さや鈍感さによって生活上の困りごとが生じる場合があり、刺激を減らしたり、安心できる感覚を見つけたりすることを紹介しています。
「不器用=発達性協調運動症(DCD)」ではありません
子どもの不器用さについて調べると、
「発達性協調運動症」
「DCD」
という言葉を目にすることがあります。
DCDは、運動の協調に関わる神経発達症の一つです。
ただし、
不器用な子どもがすべてDCDというわけではありません。
DCDでは、年齢や経験から期待されるよりも運動技能の獲得や遂行が難しく、その困難が着替え、食事、書字、遊び、学校生活などの日常生活に持続的な影響を与えているかなどを含めて評価します。
また、視覚の問題、ほかの神経学的な病気、全体的な発達など、別の理由で運動が難しくなっていないかも確認します。
発達性協調運動症(DCD)ではどんな困りごとがみられる?
DCDのある子どもでは、
- よく物を落とす
- 転びやすい
- ボールを投げたり受けたりするのが難しい
- 走る、跳ぶ、バランスを取ることが苦手
- はさみや箸を使うのが難しい
- ボタンや靴ひもに時間がかかる
- 字を書くことが大変
- 体育や工作を避けるようになる
などの困りごとがみられることがあります。
ただし、現れ方は一人ひとり違います。
運動全般が苦手な子もいれば、
手先の作業だけ特に難しい
という子もいます。
姿勢と不器用さには関係がある?
姿勢が安定していると、手を使った作業がしやすくなります。
たとえば文字を書くときも、
椅子に座る
体を支える
腕を動かす
鉛筆を操作する
という動きを同時に行っています。
体を支えることに負担が大きいと、
机に伏せる
椅子でもぞもぞする
片手で頭を支える
といった姿になることがあります。
ただし、
「姿勢が悪いから不器用」
と単純に考えることはできません。
集中、疲労、机や椅子の高さなど、環境も関係します。
家庭でできる工夫
不器用さが気になると、
「できるまで練習させた方がいい」
と思うかもしれません。
練習が役立つこともありますが、同じ失敗を何度も繰り返すだけでは、本人が苦手意識を強くすることがあります。
家庭では、取り組みやすい方法を考えてみます。
難しい動きを小さく分ける
たとえば靴ひもを結ぶ場合、
ひもを持つ
交差させる
輪を作る
輪を通す
というように、動作を小さく分けます。
一度に全部できることを求めず、
「ここまではできた」
という部分を増やしていきます。
DCDへの支援でも、難しい活動を小さな動作に分けて練習したり、課題そのものを行いやすく調整したりする方法が用いられています。
道具を使いやすくする
道具を工夫するだけで、難しさが減ることがあります。
たとえば、
太めの鉛筆
握りやすいグリップ
子どもの手に合うはさみ
面ファスナーの靴
などです。
「普通の道具を使えなければいけない」
と考えず、できる方法を選びます。
成功しやすい難しさから始める
最初から難しい課題に挑戦すると、
「やっぱりできない」
という経験になりやすくなります。
少し頑張ればできそうな活動から始め、
成功したら少しずつ難しくします。
好きな遊びの中で体を使う
運動の練習という形にすると嫌がる子でも、
公園
ボール遊び
ダンス
追いかけっこ
水遊び
など、好きな遊びなら体を動かせることがあります。
運動能力だけを目的にせず、
「楽しい」
という経験を大切にします。
できた部分を具体的に伝える
「上手だね」
だけでなく、
「最後まで線を切れたね」
「前よりボールを見られたね」
「自分でボタンを一つ留められたね」
というように、できた部分を具体的に伝えます。
結果だけでなく、工夫したことや取り組んだことも見ます。
苦手なことを全部やらせない
学校生活や家庭では、
「みんなと同じ方法」
でなくてもよいことがあります。
たとえば、
靴ひもではなく面ファスナーにする
書く量を調整する
パソコンを使う
体育で難しい動きを一部変更する
など、負担を減らす方法があります。
できないことを避け続けるという意味ではなく、
必要以上に困らなくてもよい環境をつくる
という考え方です。
「もっと練習すればできる」は間違い?
練習そのものが悪いわけではありません。
繰り返すことで上達することもあります。
ただし、
何度やってもうまくいかない
本人が強く嫌がる
失敗が続いている
という場合には、
練習量を増やすだけではなく、
課題を簡単にする
動きを分ける
道具を変える
別のやり方を使う
といった工夫も必要です。
「努力が足りない」
と考えるのではなく、
「やり方がその子に合っているか」
を見直してみます。
運動が苦手でも、無理にスポーツをさせた方がいい?
体を動かすことは大切ですが、
特定のスポーツができることだけが目標ではありません。
苦手な活動ばかり続くと、運動そのものを嫌いになることがあります。
散歩。
自転車。
水泳。
ダンス。
公園遊び。
家の中でできる運動。
その子が楽しめる方法で体を動かすこともできます。
「運動が得意になる」
だけでなく、
「安心して体を動かせる」
ことも大切です。
相談した方がいいのはどんなとき?
不器用さには個人差があります。
一方で、次のような場合には相談を考えてもよいでしょう。
- 転倒やけがが非常に多い
- 食事や着替えなど日常生活に大きな困りごとがある
- はさみ、箸、ボタンなどの操作が年齢に比べてかなり難しい
- 書字に非常に時間がかかる
- 体育や遊びへの参加を強く避けている
- 運動の苦手さによって本人が自信を失っている
- 園や学校から運動や手先について指摘されている
- 以前できていた動きができなくなった
- 歩き方や力の入り方などに気になる変化がある
特に、
以前できていた運動能力が失われた
片側だけ動かしにくそう
急に歩き方が変わった
などの変化がある場合には、早めに医療機関へ相談してください。
相談先はどこ?
相談先としては、
- かかりつけの小児科
- 発達を専門とする医療機関
- 自治体の発達相談
- 保健センター
- 作業療法士
- 理学療法士
- 園や学校の先生
などがあります。
DCDが疑われる場合には、小児科医や作業療法士、理学療法士などが運動技能や日常生活での困りごとを評価することがあります。
相談するときには、
「不器用です」
だけでなく、
「どんな動きが難しいか」
「いつごろから気になるか」
「家庭と園・学校でどう違うか」
「本人が困っていることは何か」
「日常生活にどのくらい影響しているか」
を伝えると、状況を整理しやすくなります。
不器用さだけで、その子を決めつけない
運動や手先が苦手だと、
「できないこと」
ばかりが目につきやすくなります。
でも、
体を動かすことは苦手でも、よく考えることが得意。
ボール遊びは苦手でも、絵を描くことが好き。
作業には時間がかかっても、丁寧に取り組める。
ということもあります。
大切なのは、
「みんなと同じようにできること」
だけではありません。
何が難しいのか。
どんな方法ならできるのか。
何なら楽しめるのか。
どんな工夫があると生活しやすいのか。
そうしたことを一つずつ知っていくことです。
理解できることが増えれば、できることも増えていきます。
